英国や米国の相続事情が詳しくレポートされていました。

契約社会の両国の実情は、いろいろ考えさせられることがありますね。

特に、アメリカの「プロベイト」。

日本では、基本的に遺言あるいは遺産分割協議で手続きが進みます。
一方、米国では、裁判所の管理のもとで相続手続が進むのが基本です。

米国では、相続が開始すると、管轄の裁判所に任命された執行人が
遺産や相続人を調べ、債務の整理や納税などを行って、
最後に残った財産を相続人に渡します。

この一連の手続きをプロベイトと呼び、
通常1年以上の日数と、遺産総額の2~4%の費用がかかります。

おまけに、裁判手続なので内容が公開されちゃう・・・_| ̄|○

だから、米国ではプロベイトを避けるために信託を利用するワケ。

残念ながら日本でも、家裁に持ち込まれる相続問題は年間1万件強。
被相続人100人中1人がモメているという計算になります。

このまま権利だけを主張する風潮が広まれば、
相続手続のあり方を根底から見直す時がくるかもしれませんね。


【受け手に最適な財産を 英米流 相続の知恵(上)】

生前の信託で円滑に

 死後に財産を誰に渡すか、残された子どもは財産を管理できるか――。相続は英国や米国でも深刻な問題だ。英米では家族のためになる資産の残し方が広がっており、資産を持つ人は生前から専門家と二人三脚で計画を練ったり、信託を活用したりしている。現地を訪れ、最前線を2回にわたり紹介する。

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 「親族に争ってほしくない」。ロンドン郊外に妻と暮らすエリック・フラーさん(60)は30代半ばで遺書を書いた。子どもに恵まれず、老後について考えたのがきっかけだ。最初の遺言には相続人のほか、老人ホームの希望条件などを書き留めた。

 15年前には遺言を見直し、自らの死後に妻の生活を支援できる体制を整えた。エリックさんの相談に乗るファイナンシャルプランナー(国際的な資格であるCFP)のジェイソン・バトラー氏は「元気なうちに老後や相続について考えることは大切」と強調する。

■「遺言は当然」

 英国では「財産のある人は多くが遺言を活用する」と相続問題を手がけるイアン・シップウェー氏は話す。米国も生前に死後のことを考えるのは当たり前とされ、「資産家は専門家と遺言や信託などを使って生前に計画を作る」(三菱UFJフィナンシャル・グループ、米ユニオンバンクのランス・ヤナギハラ氏)。大半の人が遺書を書いていない日本とは対照的だ。

 ニューヨークの書店には、遺言や信託の解説書が並ぶ。なかでも目を引くのが、空欄を埋めるだけで簡単な信託を設定できるひな型を付けた本。売り場の担当者は「資産家の間では信託への関心も高い」と話す。

 もっとも相続人と内容を決めずに亡くなると、争いが生じる恐れがあるのは国を問わない。英大手銀行HSBCの調査によると、相続財産を生活費に充てたいという人が34%に上る。物価高を背景に相続に期待する人が多いようだ。

 米国では被相続人が亡くなると、プロベイトと呼ばれる手続きで相続人を決める。「1年以上かかり、遺産の内容などが公開される」(ユニオンバンクのヤナギハラ氏)

 この手続きを避けるため信託が活用される。離婚・再婚が多く、残された配偶者の再婚相手の家族に財産が移るのを防ぐ狙いもあるようだ。

 「両親はフロリダへの移住を望んでいる。今後の生活や相続について家族で話し合いたいので協力してほしい」。ボストン郊外で活動するCFPのマーク・フリードマン氏の元に、70歳代のベイカー夫妻の長女ケリーさんから電話がかかってきた。後日、夫妻とケリーさん、長男ロバートさんが事務所に集まり家族会議を開いた。

 ベイカー夫妻には100万ドル超の資産がある。亡くなれば2人の子どもで均等に相続することになるが、問題はロバートさんへの承継だ。職を転々とし、実家を訪れては夫妻から金銭的援助を受けている。

 一度に遺産を渡すと使い果たす恐れがあるため、フリードマン氏は信託の活用を提案。家族は弁護士に依頼し信託を設定することにした。

■猶予期間設ける

 仕組みはこうだ。両親の死亡時に遺産を子ども2人で等分するものの、ロバートさんに一度に渡さず、10万ドルを渡して残り40万ドルを信託で5年間管理する。ケリーさんが信託を管理する受託者になり、信託財産は株などの金融商品で運用。運用益をロバートさんが受け取る。

 相続に“猶予期間”を設け、ロバートさんに財産管理能力があるか見極めるのが狙いだ。自身の収入と信託財産の運用益だけで5年間生活できたら、残り40万ドルを相続できるという。

 信託制度発祥の国、英国ではどう活用されているのか。

 ロンドン郊外に住むAさん(88)の生活は、20年以上前に亡くなった夫が残した信託が支えている。生活費や医療費を信託財産から受け取るため財産管理の煩わしさから解放される。

 信託の受託者は娘ら親族だ。制度に詳しくない親族の不安を解消するため「必要に応じて家族に助言している」と、ディーン・マッカーシー弁護士が側面から支える。

 「もともと信託は相続税対策として活用されてきた。ただ、法改正で節税効果が薄れ、現在は遺族の財産と生活を守るため利用されている」。杉山英国法律事務所の杉山栽一弁護士は指摘する。

 日本では信託がなかなか広がらない。司法書士の宮田浩志氏は「信託法の改正で信託を活用できる道が広がったものの、提案できる専門家が少ない」と指摘する。「受託者への就任をためらう人が多い」との声も聞かれる。

 英国や米国では家族や知人などが受託者に就くケースが大半であり、受託者は利益を受ける人のために全力を尽くす義務を負うのが当然とされる。デビッド・ファウスト・ニューヨーク州弁護士は「不安なら、弁護士やCFPなど専門家に助言を受ければいい」と話す。

 日本でも財産管理の手法として信託の活用を検討してもいいだろう。
(1月9日 日本経済新聞)


土地家屋調査士 大阪 和田清人(image)
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