エートス法律事務所の西中務先生の記事。
運の良くなる生き方」「争わない生き方が道を拓く」というご本をお出しです。

先生曰く、紛争処理の優先順位は、
 1.話し合いで解決
 2.裁判しても和解で解決

裁判は依頼者にとって、最も不利な決着。
その理由のひとつは、勝っても負けても「恨み」が残るから。

響きますね。
早速、ご本を拝読してみます。(^^;


【ベテラン弁護士が「離婚はやめろ」と説くワケ
 1万人の人生からわかった「幸運」を呼ぶ法則】

日本でも離婚が珍しいことではなくなった現在、性格の不一致、浮気、金銭……さまざまな理由で離婚を考えている方は多いであろう。少しでもいい条件で離婚して、次の人生を楽しみたいと考えている方もいるかもしれない。
しかし、半世紀近く弁護士を務める西中務氏は、争いはなるべく避け、離婚も回避することが最善の道だと説く。特に法廷闘争に持ち込むのは最悪で、勝っても負けても決していいことはないという。
このたび『1万人の人生を見たベテラン弁護士が教える「運の良くなる生き方」』を上梓した西中氏が、前回に続き、離婚が勧められない理由を語った。

浮気のやめさせ方を教える変な弁護士

私は大阪でもう47年間も弁護士をやっていますが、ときどき「不思議な弁護士ですね」といわれます。いわれてみれば確かに私は、一般的な弁護士の仕事とは違うことをしております。

たとえば、私のところにはよく、「浮気をやめさせてほしい」と相談される方が来られるのです。

もちろん、離婚の相談なら一般的な弁護士の仕事です。ですが、私のところにいらっしゃるのは、こんなご相談なのです。

「主人が浮気をして困ってるんです。何とかやめさせる方法はありませんか」

私は、「ふん、ふん」と相づちを打ちながら話をじっくり聞きます。考えてみれば、弁護士の仕事としてはかなり変です。

なぜなら、相談者は離婚の相談ではなく、浮気をやめさせる相談に来ているのですから。離婚しないのなら、離婚訴訟も損害賠償請求も関係ありませんから、本来、弁護士の出る幕はないのです。

なのに、「浮気をやめさせて」という依頼者が来て、「それなら……」と相談に乗るのですから、確かに「変な弁護士」だといわれても仕方がありません。浮気の対処は、法律相談ではなく人生相談のはずで、弁護士の守備範囲ではないのですが、いつの間にか、私にはこういう相談が増えていました。

「西中先生やったら、何とかしてくれると思って」

こうおっしゃる方もいらっしゃいます。相談に来る人にとって、私は一種の「何でも屋」なのかもしれません。

「離婚してもいいことはないですよ」

もっとも、最初の頃は、夫婦間のトラブルが持ち込まれるときは、もっぱら離婚の問題ばかりでした。

「主人が浮気をしているらしい。離婚も考えている」

そういった法律相談です。そうすると、普通の弁護士の仕事としては、こんな具合に進むわけです。

(1)まず浮気をしているかどうかを確かめる。
(2)浮気なら証拠をつかむ。

この段階でこんな警告書を出す場合もあります。

「あなたの浮気はわかっている。ここにこんな証拠がある。今すぐ浮気をやめたほうがいい。さもないと、損害賠償を払うことになる」

警告を出して、浮気がそれでも止まらなければ、離婚を求めます。そして、ご主人が拒むようなら離婚訴訟まで進めるわけです。

これが一般的な弁護士の仕事です。離婚を考えて法律相談される方は大抵、弁護士にこうしたことを期待されているのではないでしょうか。

けれど、私は別のことをしてしまうのです。

離婚したいという奥さんが来ると、こう言います。

「離婚してもいいことはないですよ。その前に、ご主人の浮気を止めたほうがいい」

すると、相談に来た人も、「そんな方法があるんなら、そのほうがいいです」と乗り気になる場合が多いのです。

こんなことを繰り返していたからでしょう。「西中先生なら、何とかしてくれる」と、浮気を止める人生相談に来る人が当たり前になったのです。

「わざわざ、カネにならないほうへ話を持っていくなんて、あんたは変わった弁護士やな」と、ほかの弁護士にからかわれることがあります。確かに、離婚訴訟や慰謝料請求などの問題になると弁護士の報酬が出ますが、離婚しなければ報酬はありません。でも私は、「夫婦仲が円満になって、丸く収まるのなら、それでええか」、そう思って、人生相談に乗ってきたわけです。

離婚したかった妻の気持ちが変わった瞬間

弁護士でありながらそうした“人生相談”に乗ってきたのは、私には、「争いは不運を招くが、争いを避ければ幸運が訪れる」という信念があるからです。

争いを避けて、幸運を手に入れた例をご紹介しましょう。

ある年の暑い夏の日、私は、大阪市内に住むある女性から離婚の相談を受けました。その人のご主人は土木会社に勤めているのですが、お酒が好きで帰りがいつも遅く、夫婦仲が悪かったのです。相談者である奥さんは、ご主人が遅く帰ってくるたびに腹を立てて、食事の面倒などを見てあげなかったようです。

私は「離婚はあまりいいことがありませんよ。考え直したらどうでしょう」と勧めましたが、「もう我慢ができません、絶対に離婚します」と決意は固いようでした。

彼女は、私の事務所でひとしきり夫への不満を話した後、1カ月後、具体的な離婚手続きを進めるため再来所する約束をされて帰っていきました。

ところが、1カ月が経ち約束の日に事務所へ来られたとき、彼女の気持ちはまったく変わっていたのです。

「事情が変わったから、離婚はしません」

けろっとして、そう言いました。離婚するものだとばかり思っていた私は驚きました。

でも、それは何よりもいいことだと思い、彼女になぜ気持ちが変わったのか聞いたのです。すると、奥さんが話した事情とはこうでした。

彼女が電車に乗っていたとき、偶然、電車の窓からご主人の姿を見つけました。それは暑い昼下がりのことだったのですが、ご主人は作業服を着て、道路工事の作業をしていたのです。作業服の厚手の生地の色が変わって見えるほど大量の汗を垂らしながら、工事をしていたのです。

「ああ、お父さん、大変やな。あんなんして、毎日、働いてたんや」

そう思ったそうです。

昼間実際に働く姿を目にして、奥さんはご主人の仕事がいかに大変なものなのか、初めて知りました。その大変な仕事のおかげで、自分が生活できているとわかったわけです。

「感謝しないと、ばちが当たる」

奥さんは心底、そう思ったそうです。

その夜、いつものようにご主人はお酒を飲み、酔っ払って帰ってきました。しかし、奥さんは少しも腹が立たなかったそうです。

あんなに暑い中、汗水を垂らして働いたのだから、仕事の帰りに冷たいビールくらい飲みたくなって当然だと、ごく自然にご主人を許せました。

いつもとは違い、帰ったご主人を「お疲れ様でした」と労(ねぎら)い、温かく迎えたのでした。

すると、次の日、ご主人は飲み屋には寄らずに真っすぐに家へ帰ってきました。そして、驚く奥さんにこう言ったそうです。

「いつも遅くなってすまなんだな。これから、なるべく控えるわ」

奥さんがご主人への態度を改めると、ご主人も奥さんへの態度を改めたわけです。離婚訴訟で夫婦が争うという事態はこうして回避されました。

先日、この女性と久しぶりに会う機会がありました。あれから、随分経ちましたが、夫婦仲は円満なまま、幸せに暮らしているとのことでした。

夫婦仲が悪くなると、お互い悪いところばかりが目につくようです。でも仲が悪くなる理由は往々にして、どちらか一方だけにあるのではなく、双方にあるものです。

相手の世話になっているところや、迷惑をかけてしまっていることに気づくと、自然に感謝の気持ちが湧いてきます。そうすると、争いも自然になくなるようです。

「相手に感謝すれば、争いを避けられる」

このご夫婦は、奥さんの感謝により争いを避け、一生ものの幸運を手に入れたのでした。

離婚はあなたの運を落とす

半世紀近い弁護士生活のなかで多くの人の人生を見させてもらいましたが、離婚は不幸の入り口になることが多いというのが実感です。

訴訟になれば、長年、一緒に暮らしてきた者同士が、互いの悪いところを徹底的に攻撃し、なじりあうのですから、気持ちがいいはずがありません。勝とうが負けようが、心に大きくて深い傷を残すことになります。夫婦として暮らしてきたあの年月はなんだったのかと、空しくなる結果になります。

だから私は、離婚したいという相談者が来たら、まず、思いとどまるようにお勧めすることにしているのです。

おカネにはならなくとも、争いを減らして、少しでも幸せのお役に立てるのなら、こんなにいいことはないと思っています。たとえおカネにならなくても、私は心からの満足感を得ることができます。

この文を読んでくださっている皆さんのなかで離婚を考えている人がいらっしゃいましたら、いったん怒りの気持ちを手放して、相手にお世話になっていることや迷惑をかけていることにも思いをめぐらしてみてください。案外、感謝すべきことに気づくものです。

ただし、言わずもがなのことですが、DV(家庭内暴力)に苦しめられているといった場合はもちろん別です。これに対処することは「争い」ではなく「正当防衛」でしょう。

「争わない」は弁護士の基本

弁護士というと、訴訟など「争うこと」を生業(なりわい)にしているというイメージがあるかもしれません。

確かに、離婚にせよ、倒産処理や遺産相続にせよ、争い事が起こって裁判になれば弁護士はより大きな報酬をもらえます。争いを避けてしまえば、もらえるのはせいぜい相談料くらいで、弁護士にとって金銭的な利益にはなりません。

このため、弁護士は依頼者が争うように仕向けていると思われるのかもしれません。

でも、意外かもしれませんが、「争わないほうがいい」というのが弁護士の基本だと私は思うのです。

なぜなら、弁護士は争いは避けたほうがいいと教わったからです。

皆さんご存じのように、判事、検事、弁護士と、法律問題を扱う職業に就くには、司法試験をパスする必要があります。司法試験に受かった人は、必ず司法研修所というところへ通って、法律家としての実地の勉強をすることになっています。テレビドラマなどで司法研修所の様子をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

そして、この司法研修所で私は、ある教官から、紛争処理の優先順位は以下のように考えろ、と教わりました。

(1)話し合いで解決。
(2)裁判しても和解で解決。

つまり、いちばんいいのは裁判を避けることだと、私は教官から教わったのです。

よく、「いつも西中弁護士は、裁判をしてはいけないと言っている」と思われているようですが、そうではありません。裁判は依頼者にとって、実は最も不利な決着だといっているだけなのです。

裁判が不利な決着だという理由のひとつは、勝っても負けても「恨み」が残るからです。

不思議なことに、裁判で勝った後に不幸になる人が珍しくないのです。勝訴を勝ち取った後に会社が倒産したり、不渡り手形をつかまされたり、経営者が交通事故に遭ったりする例を数々見てきました。

「きっと、恨みを買ったために、運が落ちてしまったのだ」というと、非科学的だと思われるかもしれません。でもこれは、47年間の弁護士生活で、民事、刑事のさまざまな事件を経験してきた私の偽らざる実感なのです。

「争いは恨みを残し、運を落としてしまう」

皆さんの幸福を願うベテラン弁護士の心からのメッセージとして、どうか、決して忘れないでいてほしいものです。
(3月1日 東洋経済)


土地家屋調査士 大阪 和田清人(image)
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