相続税の調査に関するコラム。

相続税の課税対象者は、平成25年分で5.4万人。
一方、相続税の調査は平成26事務年度で1.2万件。

平成26年分の相続税の申告状況について
平成26事務年度における相続税の調査の状況について

このブログでも何度か触れていますが、
相続税は、4人に1人の割合で調査があるってこと。

これは、法人税の調査と比べて桁違いに高いですね。

で、いざ調査に来られると、81%が申告漏れ等の非違を指摘されています。
事前に裏付けを取って、「取れるところに来る」わけですから・・・(^^;

だから、やっぱり、隠しちゃダメ。
早い段階から、長期スパンでの対策を継続するのが結局は近道ですよ。


【忘れた頃に訪れる相続税調査は「8割がNG」】

相続税にも調査がある。申告後1年以上経って、忘れた頃にやって来るから油断ならない。恐ろしいのは、調査が入れば8割以上の確率で非違(=誤り、違反)が指摘されていることだ。結果として重加算税を賦課されることも多い。相続税調査は一生のうち何回もあるものでないが、課税対象者が増えているだけに、どんなものなのかは知っておきたい。

調査は年間1万件以上
8割が指摘を受ける

 相続は一生のうちに何度も経験するものではないとはいえ、相続税の課税対象者は増えている。つまりは、相続税調査の対象者も増えているということだ。

(image)
「平成26事務年度における相続税の調査の状況について」(国税庁)に基づいて作成

 国税庁発表のデータ「平成26事務年度(注1)相続税調査の実績」では、相続税の実地調査件数は1万2406件。
 そのうち、申告漏れなどの非違(=誤り、違法)が見つかった件数は1万151件であり、その割合はなんと、81.8%にも上る(右の図参照)。
 しかも、申告後1年以上経って、忘れた頃にやって来るから恐ろしい。
 とはいえ、多くの人は「何も隠していないから何も出てこない」と思い込んでいる。だが、調査官から思わぬ指摘を受けて度肝を抜かれることが多いようだ。

 相続税調査では、どんなことを重点的にチェックするのだろうか。

 基本的には、事前に税務署や国税局で申告書や提出資料などの内容を入念に検討し、実地調査ではどこを重点的に調べるかが、あらかじめ決められているのだ。

 じっさい、プロがとことん調べてから実地調査に来るのだから、素人が1人で調査に対応するのはかなり大変だ。税理士でも場数を踏んでいる人は少なく、圧倒的に調査官のペースが優位なのだ。

注1 2014(平成26)年7月~同27年6月。税務に関する事業年度は、毎年7月から翌年6月

名義預金や名義株は
何を基準に判断するか

 そんな相続税調査だが、ベテラン調査官の話を総合すると、ポイントは「名義預金」と「名義株」にかなり絞られる。

「名義預金」は、銀行通帳の名義人は子どもで、実際に預金をしてきたのが父親だといったケースだ。これは名義株も同様で、例えば、上場株式を購入するのに、父親が購入資金を負担しながらも名義は息子にしておくような場合が該当する。

「名義預金」「名義株」の調査ポイントは、「財産が誰に帰属するか」だ。

 調査官らの話では、以下を総合的に判断して、財産の帰属調査が行われるという。
1.預金などの預け入れの原資、株式などの購入の原資は誰が負担していたか
2.預金通帳・証書、届出印鑑、キャッシュカード、株券・預かり証などを誰が所持し、管理・運用しているか、また、相続開始時点ではどのように管理・保管されていたのか
3.預金や株式の取り引きの指示を誰が行っていたか
4.利息や配当金などの法定果実を誰が受け取っているのか
5.家族名義預金の名義人がその預金を有することとなった経緯・動機、相続人固有の財産の把握(収入及び財産蓄積状況の確認)と帰属の判定を要する家族名義預金との比較
6.設定や購入の原資が被相続人の資金の場合は贈与が行われているか否か、贈与税の申告や納税を行っているか

 名義預金でよくクローズアップされるのが、いわゆる妻のへそくりだ。何十年も一緒に生活していれば、その金額はかなりになることもある。

 金額にもよるが、収入のない専業主婦が何百万、何千万円も貯めていれば、妻が夫からもらったお金を貯めた名義預金と判断される可能性が高い。

 妻のへそくりが相続財産と判断された裁判では、「へそくりの半分は妻の財産、半分は夫の財産」と判断された。実質のお金の出所は夫である一方で、夫は妻の協力で仕事ができたとみなされるので、半分は妻のものと判断されたのだ。

 これは、現金でタンス預金をしていても同じことだ。普通は、へそくりやタンス預金を税務申告したりしないだろう。だが、現実にはしかっり課税対象にされているのだ。へそくりとタンス預金のことは、ぜひ知っておきたい。

「質問応答記録書」を
作成されたら要注意

 相続税調査が法人対象の法人税調査が大きく違うのは、実地調査で会計帳簿や計算書類などが納税者側にないことだ。そのため、相続人の「意思確認」が重要な調査要素になってくる。よって、相続税調査では物証を集めるより、聞き取りが多くなる。

 申告漏れによる重加算税の賦課案件ともなれば、税務調査官は「質問応答記録書」を作成する。これは、納税者との会話のやり取りを逐一会話形式で残し、こんなことを言ったとか、ここまで証言したなどが分かるように、記録として残すものだ。

 納税者にはページごとに押印を求めるが、これは後々、納税者と揉めごとになった時の証拠とするためだ。
 よく、「押印は抵抗があるので拒否できないのか」と聞く人がいるが、じっさいは、拒否しても何ら問題はない。ただ、調査官は押印拒否の理由をしっかり記載しておくので、拒否は意味がない。

 逆に「押印できない理由がある」と思われ、争いになった場合には不利になるケースの方が多いと考えられる。もし、文章内容に納得できないのなら、修正を要求するなどして正確に記載してもらうことが重要だ。

 2015年から相続税が増税され、課税対象者が増えたことで相続税調査件数も増えるのだろうか。これについて大方の予測は、「大きく変わることはない」と見られている。

 なぜなら、課税当局も慢性的に人手不足であり、調査官1人で調査できる件数にも限りがあるからだ。ちなみに、過去5年間の相続税調査件数は、それほど大きな変化がない。

 国税庁の発表では、2010年から14年度までの調査調件数は、1万2000~1万3000件程度で推移している。

 相続税調査は、小規模税務署以外では資産税部門が行う。その担当者は全国の524税務署で4000人弱しかいないから、いかに効率的に調査を行うかに力を入れている。よって、事前の情報収集が鍵を握っているのだ。

 相続税調査が入ってからでは軍配は税務署側に上がりやすい。課税当局がどういった点に疑問を抱くのか、調査となれば、どんなところをチェックするのかは、できるだけ勉強しておきたい。
(8月4日 ダイヤモンド・オンライン)


土地家屋調査士 大阪 和田清人(image)
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