山林の境界の実態を垣間見れる記事。

高齢化→手が入らない→荒れる→木材の商品価値ダウン
→資金難→さらに手が入らない・・・

見事な負のスパイラル。(^^;
もう、個人レベルで何とかできる次元じゃないですよね。

やはり、所有権を集約して、山全体を一元管理する仕組みが必要ですね。
せっかくいい商材があるのに、朽ちさせるのはもったいないですよね。


【「どうする 山林の境界」(上)】

 土地の境界や面積を調査して確定する地籍調査が進んでいない。鳥取県全体の進捗(しんちょく)率は2013年度末で25・5%と全国の51%を大きく下回っている。自治体職員の不足や財政負担の大きさなどが背景にあるが、特に山林では境界が未確定なため木材の活用や森林や林道の整備ができないなどの影響も出ており、林業に暗い影を投げ掛けている。

全国に後れ

 地籍調査は一筆ごとに土地の所有者に立ち会いを求めて境界の位置と面積を測量し、地図に取りまとめる作業。鳥取県では1957年に旧羽合町と旧気高町で事業着手したが、県全体では全国に大きく後れを取っている。

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 東日本大震災などの災害を契機に土地の基礎データの重要性が再認識されて市町村の着手率や進捗率も徐々に向上しており、県内では北栄町と日吉津村が調査を完了している。しかし、境港市が未着手のほか、若桜町2・9%、日野町5・9%、江府町6・1%などとなっている。

 地籍調査に土地所有者の費用負担はないが、国が半分を負担し、残りを県と市町村が折半することになっている。しかし、公共事業などに重点を置く市町が多く、担当職員の配置が困難などの理由から調査が進んでいないのが現状だ。

所有者高齢化

 特に調査が遅れているのが住宅密集地と山林。住宅密集地の進捗率は13%(全国平均23%)、林地は19%(同44%)と、宅地の30%、農用地の46%に比べてかなり低い。山林の地籍調査が必要な面積は県全体で1817平方キロあるが、本年度の調査面積は27平方キロで、単純計算でもあと68年かかる計算だ。

 住宅密集地については「権利関係が複雑でなかなか進まない」(鳥取市)などが理由だが、山林では所有者の高齢化、森林の荒廃などでさらに調査が難しくなっているという現状もある。

 町の9割以上を森林が占める三朝町では本年度から山林の地籍調査を本格化させている。しかし、山を知っている地区の役員ら調査に協力する立会人を集めるのは困難。さらに、登記上は所有者が江戸時代のままになっていて相続人が不明だったり、明治時代の地図を基にしているため木が生えるなどして地形が大きく変わっていたりするケースもある。

 同町農林課の青木大雄課長は「昔は山をよく知っているお年寄りがいたが、今は60代、70代でも土地の境界が分からない人がほとんど」と頭を抱える。同町では調査を終えるにはまだ30年はかかると見ており、土地の境界を示す目印が失われたり、人の記憶があいまいになったりして「さらに境界は分からなくなる」(青木課長)とみる。

 県農林水産部農地・水保全課の村田智史さんは山林の地籍調査について「住民の協力がないと進まないので事業の重要性を積極的に広報したい」と話し、「元気なうちに自分の土地の境界を子どもや子孫にしっかり正しく伝えておいてほしい」と訴える。
(7月24日 日本海新聞)


【「どうする 山林の境界」(下)】

 木材など生物由来の資源を活用する「バイオマス」が注目をあつめている。しかし、山林の19%でしか地籍調査が進んでいない鳥取県では、山林の境界が分からないことで間伐や林道の敷設にも支障が出ており、森林の活用の障害になっているのが現状だ。

荒廃避けられず

 「山があるのは知っているが場所は分からない。果樹園があったころには何度か行ったんだが…。山には関心がなかったから」と話すのは三朝町東小鹿の村岡剛さん(58)。「親父も今は山によう上がらんようになったし、いつまでも放っておくわけにはいかないが」と頭を抱える。

 鳥取県中部森林組合によると、山林の間伐作業では所有者ら立ち会いのもとに作業を進める。しかし、所有者が不明なケースが増えており、「補助金事業では工期に間に合わないと断念せざるを得ない場合もあり、間伐作業にも支障をきたす」(加藤栄隆参事)と頭を悩ませる。

 県中部で森林に木を植える活動をしている讃郷愛林協会の田栗栄一会長(61)は、長年の木材価格の低下によって林業経営だけでなく、森林を保有・管理する意識が薄らいだと指摘。山に人の手が入らないことでイノシシやシカの被害が増えたり、竹林の拡大竹害などによって「さらに誰の山か分からなくなる」と警鐘を鳴らす。

 山林所有者の高齢化も進んでおり、「やむを得ず山を荒れさせている」という声もある。また、土地の相続などで所有者が県外に在住しているケースも多く、今後も山林の荒廃は避けられないのが現状だ。

 一方、鳥取県に隣接する岡山県真庭市では山林の93%で地籍調査が完了しており、森林資源を活用する「バイオマスタウン」として全国的に注目されている。同市の太田昇市長は今月倉吉市で開かれた講演で「地籍調査が進んだのは先人のおかげであり、真庭の財産。そのベースがないとバイオマスの活用もできなかった」と述べた。

関係部署の連携

 県中部総合事務所農林局林業振興課は「人の財産に関わることなので秘策はないが、山の境界もきっちりしておかないと今後、所有間での紛争も増えてくる」と話す。

 自治体による地籍調査のほかにも、森林組合による間伐作業、国や自治体による林道整備など、山の調査は多方面で行われている。同課は「自治体の中にも税務課や農林課、地籍調査室などの関連部署がある。それらが横断的に連携を取り、情報を共有しておくことが必要」と話している。
(7月24日 日本海新聞)


土地家屋調査士 大阪 和田清人(image)
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