相続発生前は病院に入院していることが多いでしょう。その間の看病は配偶者や近くに住む子供たちが行なうでしょう。遠くに住む子供も見舞いに駆けつけることでしょう。家族の誰もが回復を信じて看病します。そして看病の甲斐なく余命わずかと医師から告げられても、この場で相続の協議は難しいと思われます。海外ではこの時点で協議が普通に行なわれるようですが、日本では生きている人の前で相続協議は不謹慎と思われるでしょう。
(image) 相続が発生すれば、通夜、告別式が続き、忙しい日々が続きます。やがて四十九日法要が過ぎると一段落かもしれません。相続の放棄は亡くなった日から3ヶ月以内、相続税の申告は10ヶ月以内と決められています。相続税が発生する場合はこれまでに遺産分割を行い、相続税を支払わなければなりません。一旦入院してからは子供たちが久しぶりに顔を合わせたからといっても、その間相続協議を行なうのは難しいでしょう。それでは相続が発生してからは相続対策として節税や納税資金対策などはさらに難しいでしょう。
生前のメッセージ
相続税を納めるのは残された遺族です。相続税の計算にはまず相続財産の把握が必要となります。この財産評価は法律で決められていますので、自分勝手に評価するわけにはいきません。財産がどのくらいあるのか、これが分からなければ相続税が発生するのかしないのか、誰が何をどのくらい引き継ぐのか検討も出来ません。プラス財産、マイナス財産だけでなく保証人という責任や加入している保険等も引き継がれます。これら財産の正確な把握が出来るのは亡くなっていく方だけかもしれません。きちんと整理して次代に伝えることは大切なことでしょう。また残された遺族だけでは相続協議がスムーズに行かず、「争族」に発展することもあります。自己主張に終始すれば相続財産の規模にかかわらずトラブルになる可能性はあります。一旦協議がこじれると長期化し、その後親戚付き合いが全く無くなる場合もあるでしょう。
(image) 亡くなった方は生前努力され資産を築いてきました。亡くなった後は別世界で家族仲良く話し合って欲しいと願うだけでなく、誰が、何を、どのくらい取得するかの道筋をつけておく責任があります。メッセージの伝え方として遺言という方法がありますが、生前に家族の意見を聞きながら申し伝えるほうが穏やかかもしれません。相続は人の死によって開始されますが、それまで何もせず無関心でいいと言うことではありません。無関心は家族を傷つけることになります。子供にすれば独立して何年経とうが、親からのメッセージは第一優先に受け止めるものとなります。遺産分割に関するメッセージは生者として最後のメッセージではありません。