今回のテーマは、今年度の介護報酬改正のうち、サ高住に関するものを、ご説明します。
昨年度は、2年に1回の医療報酬の改定年でした。サ高住などの集合住宅への訪問診療の大幅な見直しがあったことはご存知の通りです。医療行為が必要な高齢者が数多く住んでいる介護保険施設ではない、集合住宅(サ高住や住宅型有料老人ホームなど)に往診した場合、一昨年度までは月に約4万円請求できた医療費(在宅時医学総合管理料)が何と、4分の1に下げられ、その為、有料老人ホーム等の医療難民が増加したというものです。本来は一軒一軒の患者のご自宅へ往診するものが、数十人と住んでいる集合住宅では、訪問効率もよく一度の訪問で何十人も診療できるのが医療機関の魅力でした。しかしながら、不適切要因(医療機関が入居者に訪問医療を独占的に提供する契約を事業者と結び、その見返りに紹介料を支払う事例)とされる診療報酬でも報酬が高い「在宅時医学総合管理料」にメスが入ったのでした。また、訪問診療費も2分の1に減らされました。
(image) 平成26年6月11日に開催された第102回介護給付費分化会で、平成27年度の介護報酬のあり方が指摘されました。それによりますと、同一建物の問題点としては、『高齢者向けの集合住宅については、市町村の医療・介護提供体制やまちづくりとも整合的な適正な配置と、入居者のニーズに応じた適切な医療・介護サービスが過不足なく提供されることが重要である。そのためには、介護保険事業計画と高齢者居住安定確保計画(前回で説明済)の連携、サービス付き高齢者向け住宅の指導ガイドラインの策定、ケアプランの適正化に向けたケアプランチェックの実施や地域ケア会議の充実等が考えられるが、介護報酬改定での対応を含め更にどのような対応が考えられるか。』というものでした。その検討会が、11月13日の第114回介護給付費分化会でありました。しかし、その前々日の11月11日の朝の
NHKニュースで次のような放映があり、びっくりされた方も多いのではなかったでしょうか。『
高齢者向けの集合住宅で提供される訪問介護サービスについて、厚生労働省は、移動に手間がかからないなどとして、来年春の介護報酬改定で、一定の条件を付けたうえで報酬額を引き下げる方針を固めました。「サービス付き高齢者向け住宅」など、見守りや食事などのサービスを提供する集合住宅は、特別養護老人ホームなどの介護施設が不足するなか、都市部を中心に増加しています。介護や医療のサービスは外部の事業者が提供しますが、効率的に入居者を訪問でき、より多くの報酬が得られるため、サービスが過剰に提供されるおそれがあると指摘されています。このため、厚生労働省は、ことしの春に集合住宅への訪問診療の報酬額を大幅に引き下げたのに続き、介護サービスについても、一般の住宅に比べて移動に手間がかからないなどとして、来年春の介護報酬改定で、一定の条件を付けたうえで報酬額を10%引き下げる方針を固めました。具体的には、現在、事業所と同じ建物にある集合住宅で訪問介護サービスを提供した際に行っている報酬額の引き下げを、事業所と同じ敷地や隣接する敷地にある集合住宅のほか、サービスを提供する高齢者が1か月に20人以上いる集合住宅にも広げて適用するとしています。厚生労働省は、報酬額の引き下げでサービスの過剰な提供を防いでいきたいとしています。』この報道内容は、11月13日の介護報酬分化会の検討内容ですので、事前リークされたことになります。いつもは、日経新聞が前日にリークする場合が多くのですが、NHKの報道ということで驚いたわけです。前回(4年前)の介護報酬改定では、サ高住等の集合住宅に併設されているデイサービスの場合、送迎が必要ではないという理由で、94単位の減算がなされました。この時の条件が、同一建物というものでした。従って、サ高住の建物の脇にあるデイサービスや、道路を挟んであるデイサービスへの送迎は認められていました。しかし、今回の改定では、同じ敷地内、道路を挟んで位置するデイサービスへの送迎も、カットされました。送迎費としての94単位ではない単位が想定され、更なるカット分を本来の送迎時に係る居宅内介助の費用に充てることも検討されましたが、送迎減算は変更ありませんでした(送迎時に実施した電気の消灯・点灯、着替え等の居宅内介助等を通所介護サービスの30分以内の所要時間に含めることができるようになりました。)
(image) また、前回の改定では、30戸以上の集合住宅への同一建物内からの訪問介護の場合は、1割カットでしたが、
次回は、同一建物の場合は、戸数に関係なく1割カット、同一建物内への訪問介護だけでなく、外部からの訪問介護でも月利用者が20人以上であれば、やはり1割カットなるということです。
(image) (image) 事業所との同一建物、敷地内建物又は隣接する建物とは、
養護老人ホーム・軽費老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・旧高齢者専用賃貸住宅を指します。平成27年度の改定では、更に、小規模多機能型居宅介護事業所を併設した、サ高住等の高齢者の住まいがある場合には、今までは8割以上(25名定員の小規模多機能型の場合、20室以上)が併設されると1割カットでしたが、その減算は廃止され、新しい介護報酬体系(別建てで基本報酬を創設)に変更になります。その場合は、当然、現状の小規模多機能型のそれより低い設定となります。複合型も同じように変更になります。
(image) 定期巡回・随時対応型も、同一建物であっても、敷地外建物であっても、減算はありませんでしたが、平成27年度改定では、事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する場合は、600単位/月の減算となりました。今回の介護報酬の改正は、移動時間がかからない集合住宅への介護サービスの適正化=削減が共通テーマとなっています。今回の集合住宅に関わる居宅サービスの報酬・基準見直しは以下の通りです。
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