家賃保証の落とし穴(その3)
空室保証とは何か?前回は、サブリースの内容とメリット・デメリットについて注意点をご説明しました。今回は私も所属する、(社)全国賃貸経営補償機構(以下、全賃機構)が運営する「空室補償」についてのご説明です。
空室補償とは?サブリースとは似て非なる独自の家賃保証制度です。賃貸オーナー様の目線に立ち、サブリースよりも条件的に有利な家賃保証として作られたのが「空室補償」で、その仕組みは至ってシンプルです。
スキーム全賃機構は、空室補償専門の第三者機関ですので、賃貸管理・入居募集は一切行いません。従って賃貸管理は、通常どおり、街の不動産管理会社に委託していただく一般的なスキームになります。補償契約は、全国各地の代理店を通じて、オーナー様と直接補償契約を行います。
(image) (参考例) 1戸当り家賃10万円、総戸数10戸のマンションの場合管理会社が入居者を募集し、満室ならば100万円の家賃収入です。管理会社は、集金代行する場合などは、この100万円から管理費(5%想定)を差し引いた95万円をオーナー様に振り込みます。よって、オーナー様の最大収入率は、満室時の95%となります。この上で、全賃機構の空室補償「あんしん家主30 Max補償コース」をご利用いただいた場合は、毎月5%の補償料(月額掛金)をお支払いいただくため、95%-5%=90%がオーナー様の最大収入率になります。
空室補償の仕組み(image) 全賃機構が毎月1回、管理会社に入居状況の確認を行い、家賃収入率を計算します。その結果として、一棟全体の家賃収入が90%に満たない場合、その足りない差額を「給付金」としてオーナー様にお支払いするのが「空室補償」です。
家賃収入の一定化上グラフで濃い赤色の部分が給付金に相当します。例えば3月の場合、家賃収入率が74%ですから、差額の16%分を給付金として「翌月末」の4月末にお支払いします。これにより、オーナー様の家賃収入率は、最大で90%~最低80%で固定されるため安心、というのが空室補償の最大の特徴です。
空室補償のメリット(image) 収益性の高さ上表サブリースとの比較において、空室補償の最大のメリットは「収益性の高さ」です。空室保証では、礼金や更新料など「家賃以外の収入」は「全てオーナー様の収入」です。特に築浅時の礼金・更新料、建物完成から補償開始するまでの免責期間(最低3ヶ月間)の家賃収入がオーナー様の収入になるだけでも、相当な収入アップとなります。(※収支比較は、次回「その4」で解説します。)
運営上の厳しい縛りがない空室保証では、管理会社の選定、将来的な修繕工事に関して一定のガイドラインはありますが、特段の義務付けは行っておりません。管理会社の変更や修繕リフォームの実施などは、条件に縛られず局面に応じて、ベストな対処がいただける運用スキームとしています。
家賃の見直しサブリースでは、2年毎に借上げ家賃の見直しがあることが通例です。それに対し空室保証では、2年毎に見直しありのコース(変動型Max補償コース)、基本30年見直し無しのコース(Max補償コース)の2通りがあり、査定額が変わります。オーナー様にお好きな方をお選びいただけます。
節税対策毎月お支払いいただく補償料(月額掛金)は、一旦入る家賃収入の中からお支払いいただくものですので、賃貸経営上の経費として算入いただければ一定の節税効果が見込めます。これに対しサブリースでは、ただ借上げ家賃が振り込まれるだけですので、経費は発生しません。
ご認識いただきたいことこれからの賃貸経営は、少子高齢化、そして地域によっては賃貸物件の供給過剰といったことが当たり前の時代です。「とりあえず建てて、あとは管理会社に任せておけばそこそこの高入居率を維持できるだろう」というオーナー様の楽観的な考え方が一番危険です。建物の不具合、急な空室の増加など、何か予期せぬ事態が発生した場合には、問題を人任せにせずオーナー自ら危機管理意識を持って、日頃の賃貸経営に取り組んでいただく「前向きで積極的な姿勢」が必要です。事実、そのようなオーナー様の物件は、築年数が経っても建物は綺麗に管理され高入居率を維持できていることが多いです。次回、家賃保証の落とし穴(その4)では、驚くべき収益性の違いをシミュレーションいたします。ぜひご一読ください。