経営のなかでは、とにかく長期的なものの見方が必要とされます。今現在の状況をきちんと把握しつつ、将来のことも見据えていかなければなりません。しかし、現在のことを把握したうえで、今やるべき仕事をこなしていくことさえ簡単ではないのです。そのうえ10年、20年後のことなど、とてもじゃないけれども、社会がどうなっていくのかわからない、と思う方も多いはずです。これは、何が不安かもわからない、ただ漠然とした、わからないことへの不安です。現実的に、時代の変化を先に的確に予見するなどということは、無理なことかもしれません。しかし、だからこそ、いくつかの仮説をたてて逆算していく必要があるのです。細かく逆算してプランニングしていれば、たとえ社会の流れや時代が、自分の思っていた方向にいかなくとも、その軌道の修正もさほど難しくはないはずです。 実際、この20年は、建築業界にとって変化の時代でした。バブルと呼ばれる時代には、たくさんの人が不動産という形の資産を所有することを求めました。さらに、住まいそのものがまだ足りていない状況で、新しいマンションを建設すれば、すぐに入居者がやってきて、何もしなくても空室が埋まってしまうものでした。そして、ご存知のとおり、それがバプルだと気がつく人は少なく、やがてバブルがはじけて今のような不況になるとは、夢にも思っていませんでした。 また当時は、建設会社にとっても、物件の建てっぱなしということが許される状況だったといっても過言ではないでしょう。どこの建設会社にも次々と仕事の依頼が舞い込むので、建設後のメンテナンスなどを請け負える状態ではなく、さらにその必要もありませんでした。 けれども、今ではそうはいきません。物件の数に対し、人口は減少を続け、2015年には世帯数も減り賃貸業界に氷河期が訪れるともいわれています。空き物件や部屋を探している人自体が減っているわけですから、当然建設の数も減っていく一方です。何もしなければ、受注の数もどんどん減少する一方なのです。
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